抗がん剤治療にともなう下痢

 25年前に胃がん、20年前に大腸がん、昨年また胃がんで胃・脾臓・胆のう・大腸の一部を切除しました。抗がん剤で下痢になり薬を飲んでいますが治まりません。何かいいアドバイスは?

がん治療にともなう下痢の原因

胆のうや胃・大腸など消化にかかわる臓器を摘出あるいは切除されているため、消化酵素が充分に分泌されなかったり、飲食物を消化吸収するスペースが少なくなり、消化不良を起こしていることが考えられます。抗がん剤も下痢を引き起こすものが多く、複合的な影響で下痢が続いているものと思われます。

治療や療養に関してのアドバイス

長引く下痢により栄養の吸収が不十分となり、全身の疲労感、無力感が強くなり、体のさまざまな機能低下の原因になります。漢方ではこのような状態を「正気(せいき)」が消耗していると考えます。正気の消耗によって、消化、吸収の機能を表わす「脾(ひ)」の働きや体を温めて脾の機能を支える「腎(じん)」の働きも衰えてきます。この状態でよく用いられるのが「真武湯(しんぶとう)」です。真武湯には脾の働きを改善する茯苓(ぶくりょう)、白朮(びゃくじゅつ)、生姜(しょうきょう)、腎の機能を改善する附子(ぶし)、消化管のけいれんを改善する芍薬(しゃくやく)が含まれているため、脾と腎が衰えた下痢には有効です。
食欲が低下している場合には、グレリンというホルモンの分泌を促し食欲を増進する作用のある「六君子湯(りっくんしとう)」の併用もよいでしょう。また、普段冷えが強い方には胃腸を温める作用がある「人参(にんじん)湯(とう)」を併用するのも良いでしょう。経過が長くなりますので「補中(ほちゅう)益(えっ)気(き)湯(とう)」や「十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)」で体力や免疫力をつけることも生活の質が上がります。
下痢を減らすには消化のよいものを食べ、出来るだけお腹を冷やさないことが大事です。

どこの科にかかるとよいか

消化器の専門医や、漢方の専門医を受診してください。