物忘れから気付くことが多いアルツハイマー型認知症は、60歳以上の方を対象にしたアンケートでは「罹りたくない病気」の第一位です。65~70歳の5%、85歳以上の場合、35%ほどが認知症になっています。
アルツハイマー型認知症の原因は
脳神経細胞が次々と変性し、脱落していくことはわかっているのですが、本質的な原因は未だに不明です。しかし、有力な仮説として、発症の10年以上前から脳内にアミロイドβと呼ばれる異常な蛋白質が沈着し始め、これが正常な神経細胞の代謝を阻害し、神経細胞内に過剰にリン酸化したタウ蛋白が増えることで細胞死を起こすと考えるアミロイド仮説があります。
治療や療養に関してのアドバイス
本人も物忘れが増えたことを自覚する認知症の前段階の時機があり、軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment:MCI)と呼ばれます。ところが、この時期に医療機関へ相談に訪れるケースはほとんど無く、家族も物忘れが増えてきたことに気づいていても年齢のせいだと思い込んでいます。それからしばらくすると、日付の感覚があやふやになってきます。今日が何年何月何日何曜日かはっきり言えなくなり、約束の日を間違えたりします。さらに進んでくると家族が自分の大事なものを盗ったと思い込む「もの盗られ妄想」が出てくることもよくあります。前日に食べたものが思い出せず、さらについ先ほど食べたということの事実も忘れてしまいます。それ以外にも徘徊、尿失禁、火の不始末、不潔行為、人物誤認など様々な問題行動(認知症の行動心理症状:Behavioral & Psychological Symptom of Dementia:BPSD)が加わり、この時期になり家族も慌てふためくと同時に介護の手間に悩まされます。残念ながらアルツハイマー病の根本的な治療法はありませんが、2023年9月に早期のアルツハイマー型認知症に対する治療薬としてレカネマブ(商品名リケンビ)が承認されました。今後、治療効果についてさらなるデーターが得られると思われます。また患者本人や家族が悩むBPSDを薬で軽減できることがあります。家族が根気よく気長に接していくためには介護保険サービスを上手に利用していくことが大変重要となります。介護をされる方々はこの病気を恨んでも、病気になった患者本人を恨まないで下さい。
どこの科にかかったらよいか
まずはかかりつけ医に相談してください。