食物アレルギーの最新の考え方は?

食物アレルギーとは、アレルギーを起こす原因食物を摂取したときに、免疫反応によって皮膚症状(湿疹・蕁麻疹)、消化器症状(下痢・腹痛)、呼吸器症状(咳・呼吸困難)を起こすものをいい、時には、血圧低下やショックなどの強い全身反応であるアナフィラキシーを起こすことがあります。 アレルギーを起こす原因食物は卵、牛乳、大豆(「食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2017」を参考にしましたが、米は代表的なものに挙げられておりません。「あたらしい皮膚科学」第3版2018年2月発行でも同様です。)、小麦が代表的なものです。また新しい食物アレルギーのタイプとして、シラカバやコナラ・ブナなどの花粉と交差反応性のあるリンゴなどのバラ科の果物による口腔アレルギー症候群や、小麦・魚介類などある特定の食物と運動の組み合わせでじん麻疹から始まりショック症状にいたる食物依存性運動誘発アナフィラキシーがあります。
食物アレルギーがどのように発症するのかについては、完全に詳細が解明されているわけではありませんが、食物アレルギーの考え方は、最近の10年で大きく変わりつつあります。
2008年にLackの二重アレルゲン曝露仮説では、「皮膚バリアが破壊された皮膚を通して食物アレルゲンへの感作が起こり、アレルギーは進行する。一方、経口摂取された食物抗原は免疫寛容・耐性を誘導する。」ということが提唱されました。
従来は経口摂取によって、食物抗原に感作し、発症すると考えられてきましたが、最近、食物アレルゲンに対する感作は、経口曝露ではなく経皮曝露によって起こると考えられるようになりました。したがって、今まで行われてきた、食物アレルギー発症予防のための食物除去の試み(妊娠後期の母親の食事制限、出生直後からの母親の食事制限をして母乳を与える、離乳食の開始を遅らせる、血液検査を行って陽性に出た食物を制限する)の多くは、効果がないことがわかってきました。
アメリカ小児科学会でも、離乳食の開始を遅らせても、アトピー性疾患の発症を予防する根拠はないとしています。また、最近では、早期の食物経口摂取により免疫寛容が誘導されることがわかってきました。したがって、湿疹のひどい乳児に、湿疹の悪化と関係なく、大きな問題がなく摂取できている食品に関して特異的IgE検査で陽性に出ているからと言って、厳格な食物制限をしたり、その離乳食の開始時期を遅らせたりすることは、かえって食物アレルギーを誘発するのではないかということも言われています。
皮膚テストや血液検査のみで食物アレルギーと決めつけてしまってはいけません。必ず除去と再負荷テストを行ってアレルゲンを確定する必要があります。

治療や療養に関してのアドバイス

食物アレルギーの治療は、どのくらいのアレルゲンを摂取したときにアレルギー反応が出現するかで除去の程度が変わります。ごく少量のアレルゲンを摂取しただけでアナフィラキシーなどの強いアレルギー症状を起こす場合には、原因食物を微量に含む加工食品を含めた完全除去が必要です。完全除去が必要な場合には、栄養のバランスが悪くならないように、代替食品の使用が必要になります。具体的には、厚生労働科学研究班の「食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2017」を参照します。
食物アレルギーが起こるかどうかは、加工品の場合も含めてその原因となるアレルゲンの含有量が大切です。不完全除去で経過を見る場合は、不必要な除去は避け、食べてもよい量までたべて、耐性をつけることが大切です。最近では、新しい治療法として、経口減感作療法(経口免疫療法)というアレルギー食品を食べながら治すという方法もあります。また、年齢とともに症状がなくなっていくこともあります。皮膚テストや血液検査で検査値が高くても症状がでないことも多々あります。このため素人判断をしないで、定期的に専門医の診察を受けることが大切です。
食物アレルギー予防の重要なポイント
1)食物アレルゲンの経皮的な感作を防ぐため、皮膚のバリア機能を良い状態に保ちましょう。
2)離乳食の開始を遅らせないようにしましょう。
3)不必要な予防的な除去(すでに食べることができているものまで制限すること)は行わないようにしましょう。
4)血液検査や皮膚テストのみで食物アレルギーの原因は決まりません。
5)何でも気楽に相談できる専門医を捜しておきましょう。