寝つけない、何度も目が覚める

先進国では5人に一人が不眠症に悩んでいると言われます。不眠症の中には、うつ病や統合失調症、不安障害と言った精神疾患が基礎になっている場合もあります。また、睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome : SAS)、むずむず脚症候群(Restless Legs Syndrome : RLS)、周期性四肢運動障害(Periodic Limb Movement Disorder : PLMD)などもが原因の場合もあります。ひとくちに不眠症といっても基礎疾患がある場合、その疾患に対する治療を行うことが必要で、慢全と睡眠導入薬を連用することは治療上好ましくありません。前立腺肥大症や過活動膀胱が原因となっている場合も少なくありませんので、泌尿器科での治療が必要となります。これらの基礎疾患が除外できたうえで、不眠症の治療になりますが、ここに「睡眠障害対処の12の指針」(平成13年度 厚生労働省研究班報告)を示します。

  1. 睡眠時間はひとそれぞれ、日中の眠気で困らなければ十分
  2. 刺激物を避け、寝る前には自分なりのリラックス法
  3. 眠たくなってから床に就く、就寝時間にこだわりすぎない
  4. 同じ時刻に毎日起床
  5. 光の利用でよい睡眠
  6. 規則正しい3度の食事、規則的な運動習慣
  7. 昼寝をするなら、15時前の20~30分
  8. 眠りが浅いときは、むしろ遅寝、早起きに
  9. 睡眠中の激しいいびき・呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感は要注意
  10. 十分眠っても、日中の眠気が強い時は専門医に
  11. 睡眠薬代わりの寝酒は不眠のもと
  12. 睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全

治療や療養に関してのアドバイス

ここから薬物療法について解説しますが、現在、睡眠導入薬としてもっとも一般的に処方されているのはベンゾジアゼピン(BZD)受容体に作用するBZD系睡眠薬です。BZD系睡眠薬は文字通りベンゾジアゼピン骨格を有する化合物の総称で、抑制性神経伝達物質γ-アミノ酪酸(GABA)のGABAA受容体に結合することでGABAの作用を高めます。BZD系睡眠薬の副作用としては、一時的な健忘、夜間異常行動、依存形成などがあります。高齢者ではその副作用である筋弛緩作用のため、夜間にトイレに行こうとした際、ふらついて転倒する危険度が高まります。そのため、高齢者の場合、非ベンゾジアゼピン系の薬剤であるBZD受容体w1選択性作用の薬剤の方が安全とされます。最近では睡眠覚醒のリズムをつかさどっているメラトニン受容体に作用する薬剤も処方できるようになり、さらに最新ではオレキシン受容体拮抗薬という薬剤が使用できるようになった。この薬剤は脳内に広範に存在するGABAニューロンに作用することなく、脳の覚醒を促進するオレキシンという神経伝達物質の受容体への阻害作用をしめすことで、 過剰にはたらいている覚醒システムを抑制し、脳を覚醒状態から睡眠状態に移行させ、不眠症を改善する効果が期待できる。BZD系薬剤が有する依存性、健忘、ふらつき、転倒といった副作用の心配のすくない睡眠が実現できるようになっています。

どこの科にかかったらよいか

精神科・心療内科