避難所での医療活動
避難所での医療活動
県下10市10町に及ぶ被災地域では、住む家を失った被災者が避難生活へと追いやられた。避難所は、学校、体育館、公民館等の指定場所に止まらず、病院、寺院、公園等の広域に散在する結果となりその数は1月23日を最高として、1,153か所、316,678人に達した。被災者の冬空の劣悪な環境下での困窮生活が始まった。避難所への医療提供には被災地区医師会員も派遣されたが、公的な支援はもとより、県下の被災地外医師会をはしめとして、日本医師会ならびに近畿医師会連合を中心とした全国都道府県医師会の力強い支援があった。
被災地域の医療機関は除々に立ち上がり、本来の地域医療の機能を回復するに伴って地元医師会が順次引き継ぎ、震災後100日目を目途に避難所、救護所での診療を廃止する方向に向った。
避難所救護センター、救護所設置状況
全国各地より震災直後から救援の医療班が交通事情の悪い中をかけつけ、被災地に点在する避難所での医療を支援した。1月23日には厚生省現地対策木部が設置され、それを期にボランティアその他一切の医療従事者の派遣申し出については同本部において受け付け、避難所救護センター等で必要な医療従事者を要請に応じて派遣する一元的な管理体制がとられした。避難所救護センター、救護所は1月22日から順次設置していった。避難所救護センターは1月29日-2月1日には最高14か所、救護所は2月2日-2月6日の問に最高となり、147か所に達した。(表1~3)
医療内容は初期の外傷から慢性疾患へと順次移行すると共に診療件数は減少して行った。同時に、地域医療機問の復活等、医療環境の変化に応じて、可能な所からかかりつけの医療機関に役割が引き継がれて行き、3月末をもって神戸市に常設救護所を2か所残すほかはすべて終息した。
図1 避難所への派遣数
医師 | 歯科医師 | 看護婦 | 薬剤師 | その他 | 計 | |
震災日 | 71 | 3 | 180 | 17 | 139 | 410 |
2日目 | 87 | 4 | 238 | 19 | 140 | 488 |
3日目 | 120 | 4 | 317 | 22 | 159 | 622 |
4日目 | 143 | 4 | 347 | 23 | 170 | 687 |
5日目 | 152 | 4 | 370 | 24 | 190 | 740 |
6日目 | 137 | 5 | 329 | 23 | 89 | 593 |
7日目 | 193 | 5 | 354 | 29 | 122 | 703 |
計 | 903 | 29 | 2135 | 157 | 1019 | 4243 |
注)第6日目に避難所派遣数が減少するのは、第6日目が日曜日であるためである。
兵庫県、災害医療についての実態調査結果(平成7年6月)より
医師 | 歯科医師 | 看護婦 | 薬剤師 | その他 | 計 | |
震災日 | 281 | 5 | 172 | 14 | 287 | 739 |
2日目 | 293 | 5 | 221 | 18 | 313 | 650 |
3日目 | 347 | 9 | 271 | 17 | 396 | 1040 |
4日目 | 383 | 10 | 328 | 23 | 444 | 1188 |
5日目 | 385 | 10 | 328 | 20 | 456 | 1199 |
6日目 | 351 | 11 | 295 | 13 | 369 | 1039 |
7日目 | 410 | 6 | 369 | 20 | 520 | 1327 |
計 | 2450 | 68 | 1984 | 125 | 2765 | 7382 |
注)第6日目に避難所派遣数が減少するのは、第6日目が日曜日であるためである。
兵庫県、災害医療についての実態調査結果(平成7年6月)より
医療救護班派遣状況
震災発生当日より、医師1名、看護婦等4名を標準として救護班を構成し、救護センター、救護所に常駐するとともに避難所を巡回して医療に当たった。
その数は2月2日を最高に32班に達した。(表4)日木医師会は全国都道府県医師会に呼びかけて救護班を構成し、兵庫県医師会の要請に応えて被災地の医療活動を支援した。
表1 避難所救護センター
地域 | 施設の名称 |
---|---|
神戸市東灘区 | 野寄公園 |
神戸市灘区 | 浜田公園 |
神戸市中央区 | 兵庫県福祉センター |
神戸市兵庫区 | 久遠寺 |
神戸市長田区 | 県立文化体育館東側 |
西宮市 | 安井小学校 |
芦屋市 | 芦屋公園 |
宝塚市 | 宝塚第一小学校 |
光明小学校 | |
西公民館 | |
宝塚市東公民館 | |
宝塚市総合福祉センター | |
北淡町 | 北淡東中学校 |
育波小学校 | |
計14ケ所 |
平成7年1月29日~2月1日 設置ピーク時箇所
表2 救護所(常設)
地域 | 設置数 |
---|---|
神戸市 | 135 |
東灘区 | 33 |
灘区 | 20 |
中央区 | 26 |
兵庫区 | 13 |
長田区 | 31 |
須磨区 | 12 |
西宮市 | 4 |
芦屋市 | 3 |
宝塚市 | 1 |
津名郡北淡町 | 3 |
津名郡一宮町 | 1 |
計147ケ所 |
平成7年2月2日~2月6日 設置ピーク時数
表3 避難所箇所数・人数
月日 | 避難所 | 避難者 |
---|---|---|
1月19日 | 984カ所 | 274780人 |
1月20日 | 1077カ所 | 310862人 |
1月23日 | 1153カ所 | 316678人 |
1月24日 | 1133カ所 | 294078人 |
2月22日 | 933カ所 | 199127人 |
3月03日 | 872カ所 | 99913人 |
4月05日 | 699カ所 | 59947人 |
4月19日 | 630カ所 | 49980人 |
4月23日 | 627カ所 | 48314人 |
5月07日 | 536カ所 | 39804人 |
表4 救護班数推移
標準救護班構成:1班あたり医師1名、看護婦4名 ( )上段:救護センター・救護所 ( )下段:巡回救護班