エムポックスについて
1.はじめに
エムポックス(mpox)はオルソポックスウイルス属によるウイルス感染症であり、2022 年以降の流行ではヒト-ヒト感染が主体となっている。特に密接な皮膚接触(性的接触を含む)による感染が多く、従来の「動物由来感染症」という理解のみでは対応が困難となっている。
診療にあたっては、皮疹の性状や分布、接触歴を踏まえた早期の疑い、適切な検査、感染対策、行政との連携が重要である。
2.感染経路
主な感染経路は接触感染である。感染者の皮疹、体液、痂皮との直接接触により感染が成立する。また、体液等で汚染された寝具、衣類、タオル等の物品を介した感染も報告されている。
長時間にわたる近距離接触による飛沫曝露が関与する可能性もあるが、空気感染は確認されておらず、その頻度は限定的とされている。
3.主な臨床症状
潜伏期間は概ね5~21 日である。
前駆症状として、発熱、頭痛、背部痛、筋肉痛、倦怠感、リンパ節腫脹、咽頭痛などの全身症状を呈することがある。
皮膚粘膜病変は本疾患の特徴であり、斑状疹から丘疹、水疱、膿疱を経て痂皮化する。皮疹は顔面、四肢に加え、外陰部、肛門周囲、直腸粘膜に出現することが多く、肛門直腸痛や排便時痛を伴う場合がある。
必ずしも全身性に皮疹が出現するとは限らず、局所病変のみの症例も存在する。
4.診断
特徴的な皮疹を認める場合や、患者との接触歴、性的接触歴、流行地域への渡航歴がある場合には、本疾患を疑う。
確定診断は、皮疹検体等を用いたPCR 検査により行う。疑い例を診察した場合には、速やかに保健所へ連絡し、検体採取、検査、今後の対応について相談する。検体の採取・保存は保健所の指示に従って実施し、確定例および疑い例については感染症法に基づく届出を行う。
5.治療の基本的な考え方
治療は原則として、発熱、疼痛、皮膚病変等に対して対症的治療を行い、全身状態の管理に留意する。
6.医療機関内の感染対策
標準予防策および接触、飛沫、空気予防策を実施する。
7.予防法
天然痘ワクチンによって約85%発症予防効果があるとされている。
8.届出
エムポックスは、感染症法に基づく4 類感染症に位置づけられており、診断した医師は、
直ちに届出を行う必要がある。
9.参考情報
・厚生労働省:エムポックスについて
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/monkeypox_00001.html
・国立健康危機管理研究機構(JIHS):エムポックス
https://id-info.jihs.go.jp/infectious-diseases/mpox/
【免責事項】
本ページは医療従事者向けの情報提供を目的として作成したものであり、個別の診断、治療等を保証するものではない。実際の診療にあたっては、最新の法令、通知、診療の手引き等を確認のうえ、各医療機関の判断により対応すること。
最終更新日:令和8 年4月